WCK Meeting Vol.40「紙デザインとWebデザイン」レポート

2016年4月22日(金)かるぽーと第1学習室にて、WCK Meeting Vol.40「紙デザインとWebデザイン」が開催されました。

紙媒体(印刷物)デザインのプロ中のプロ、リーブル出版 の制作部長であり、デザイナーの島村学さんをお迎えして行われた今回の勉強会。
普段Web制作に携わっている方だけでなく、紙媒体を中心に活躍されているデザイナーさんや一般企業の方にも多くご参加いただき、業界の垣根を越えてデザインについて考える2時間となりました。
 

勉強会のはじめに、当日岡山から届いたばかりの書籍「プロが教えるレスポンシブWebデザイン 現場のメソッド レイアウト・UIのマルチデバイス対応手法」を懸けて、参加者プレゼントじゃんけんが行われました。

見事プレゼントをゲットしたのは……なんとこの日のメインスピーカー島村さんでした。おめでとうございます!
書籍をご提供いただきました岡山の前川昌幸さん(株式会社イー・ネットワークス)ありがとうございました!

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「紙デザインに未来はあるか」島村学(リーブル出版)


今回のメインセッションは、島村学さんによる「紙デザインに未来はあるか」でした。

リーブル出版のチーフデザイナーとして、これまで200冊以上の書籍の装丁を手がけられてきた島村さん。書籍以外にも、チラシ・ポスター・パンフレット・パッケージ・ロゴ・サインなど、グラフィックデザイン全般にわたる様々なお仕事をご紹介いただきました。

かっちりとした真面目系からユルかわいい系、ビビッドなもの、コテコテなもの、ガーリーなもの……島村さんのお仕事で驚かされるのは、媒体のバラエティだけでなく、デザインテイストの振り幅も広いことです。

牧野植物園や香美市立美術館など、地元のお仕事も多く、普段目にしていたデザインが実は島村さんによるものだった、という方も多かったのではないでしょうか。
 

紙は感覚に訴えかける情報伝達ツール

島村さんの在籍されるリーブル出版では、高知市で創業50年、編集から印刷〜流通まで1冊1冊に寄り添った丁寧な本作りをされています。
2012年には事業拡大のために自社サイトをフルリニューアルし、全国から自費出版を受注するECサイトを立ち上げられました。

現在は印刷物のデザイン・ディレクションのかたわら、サイトの制作・運営もされているという島村さん。紙とWeb、両方のデザインに関わられてきた経験から、それぞれの良さと役割についてお話しくださいました。
 

写真:リーブル出版さんで制作された「日高村オムライス街道」のパンフレットを見せてくださいました。マップ折り(外4つ折+Z折)を広げると12倍の大きさに! 手の中でダイナミックに展開する楽しさと情報の一覧性は紙ならでは。

「思わず取っておきたくなる」、「手にした人の間にコミュニケーションが生まれる」といった印刷物の良さを実感できる好例でした。

 

「Webから紙へ」提案力から生まれる新たな展開

セッション内では、島村さんのお仕事実例について、依頼内容からアイデアスケッチ、デザイン・提案から実際の展開に至るまでのプロセスを惜しみなく解説いただきました。
 


高知カーボンダム計画」では、プロジェクトのイメージをビジュアル化するために、まずキャラクター「エコビバくん」を提案されたそうです。その世界観をチラシやポスターなど紙媒体でのPR、そしてWebシステムへと展開することで、「CO2の削減量」という一見お堅い内容を親しみやすくデザインされている様子は興味深いものでした。
 


また、JA 四万十 などの事例では、Webサイトの制作から始まったお仕事が、Webコンテンツをピックアップする形で紙媒体のお仕事へとつながったというお話がとても印象的でした。

効果的なPRのためには、紙とWeb どちらも欠かすことのできない情報発信の場です。
それらを有効に連携させるためには、紙とWebの両方を同時に提案できる知識とスキル、制作体制が必要、と島村さん。また、見た目を整えるだけのデザインではなく、コンテンツへの理解と提案力がこれからのデザイナーには求められるのだと感じさせられるお話でした。

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「Hello, Web Design! 私のつまづきと勉強法」間嶋沙知


続くショートセッションでは、「Hello, Web Design! 私のつまづきと勉強法」として、ウェブクリエイターズ高知実行委員であり、デザイナーの間嶋沙知がお話ししました。
紙媒体を経てWeb制作にも携わるようになって痛感した、紙とWebの違いとつまづきポイント、効果的だったと思う勉強法をお伝えしました。

1ページのサイズが固定されている紙媒体と、長さに制限のないWebページでは、読者の視線の動きも違います。レイアウトする際にはそれぞれの媒体に合った「心地よさ」と動線の設計を体得する必要があります。

また紙とWebでは、ビジュアル面でデザイナーがコントロールできる範囲も違います。文字詰めや色、位置などほぼ完成形までデザインできる紙媒体に対し、Webサイトでは文章・画像ともに不確定な要素を相手にデザインを行います。
慣れないうちは、ついついコントロールできない細部に手をかけすぎてしまったり、思わぬデザイン漏れが発生したりしますが、より重要な“デザイン”へ力を注ぎ、後の工程へ良いバトンを渡せるようにしたいですね。
 

紙×Web の相乗効果でより良い体験のデザインを


セッションの結びとして、James Garrett 氏による「ユーザー体験を構成する5つの要素」と長谷川恭久さんの言葉を引用し、紙とWeb 共創の未来についての私見を述べました。

紙とWeb、今回の勉強会では対比する形が多くなりましたが、ユーザーの体験をつくるという面ではその境目は年々シームレスなものになっていると感じます。

ビジュアルづくりやその展開の提案が得意な紙デザイナーと、情報設計や機能づくりが得意で、成果を出すことにもシビアなWebデザイナー。お互いの得意な領域を持ち寄り融合させることで、相乗効果を生み出すデザインができると考えられます。

今回の勉強会が、紙とWebの制作者の交流の一助となれば幸いです。

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紙×Web デザイナー・パネルディスカッション


勉強会の後半では、メインセッションで登壇いただいた島村さんに加えて、ウェブクリエイターズ高知実行委員よりWebデザイナーの中野玄さん(HOOP Design)と上野洋平さん(notch)をお迎えして、「紙×Web デザイナー・パネルディスカッション」を行いました。

紙とWeb、媒体は違えど10年以上のキャリアを重ねてこられたパネラーのみなさん。
お互いに聞いてみたいこととして事前に挙げていただいたお題について、ざっくばらんにお話しいただきました。
 

  • デザインするとき何から取り掛かる?
  • 紙のノウハウ(コンテンツ)をWebで活かすには
  • 紙〜Webの流れ今昔
  • プリントメディア業界における“触らぬWebに祟りなし”感とは?
  • 紙の役割とWebの役割
  • 5年後、10年後…未来の仕事のスタンス予想
  • 動画はどうなが?
  • 今、業界で注目している人
  • エンジニアとの意思疎通のコツ

印象的だったのは、「エンジニアとの意思疎通のコツ」から派生した「デザイナーもコードを理解するべきか」という話題。

「デザインに制限をかけないように、実装面についてはあえて知らないようにしている」という中野さんに対し、「技術を理解した上でデザインすることで再現性の高い提案もしやすくなる」と上野さん。島村さんは「Webでは実装も行うため、紙に比べてどうもマジメなデザインになってしまう。印刷でもWebでも、エンジニアとの関係性ーーお互いの技術へのリスペクトと歩み寄りが大切」と、三者三様のお答えでした。

会場からの質問も飛び出し、経験に裏付けられたデザイナーの生の声と頭の中に皆さん興味津々の様子でした。時間切れとなり語り尽くせなかったテーマもありましたが、ぜひ続編に期待したいですね。

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紙×Webで懇親会!


勉強会の後は、会場を移して懇親会を行いました。たくさんの方にご参加いただき、話題は尽きず、大いに盛り上がりました。

これからも紙とWebの制作者で高知のデザインを盛り上げていきたいですね。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします!

 
写真撮影:中野玄(HOOP Design)、上野洋平(notch)、大山祐司(高知のWEBメディア ZEYO


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