WCK Meeting Vol.42「ホントに大事な見積りの話」レポート
2016年8月19日(金)高知市文化プラザかるぽーとにて、WCK Meeting Vol.42「ホントに大事な見積りの話」が行われました。
ウェブクリエイターズ高知実行委員の入交昭さん(HOOP Design)に企画・登壇いただいた今回の勉強会。イベント告知直後から多くのお申し込みをいただき、定員を大幅に増員しての開催となりました。
普段なかなか聞きにくいお金の話、会場では真剣にメモを取る方、周りの席の方と話し合う姿がたくさん見られました。
失敗しない見積りのために
制作者にとって見積りの作成は、面倒ながら避けては通れない業務の1つです。
見積りの作成作業にはプロジェクトや仕様の理解などの労力が必要な反面、見積り段階ではまだ受注できるか分からないため、いつでもふんだんに時間を割けるとは限りません。
しかし適当な見積りで仕事を請けてしまうと、割に合わない作業やスケジュールの圧迫など、「こんなはずでは…」という事態、ひいてはプロジェクトの赤字や品質の低下を招くことになりかねません。
後悔しない見積りのために、何を手がかりに金額を設定すればいいか、見積書に何を書くべきか、注意するべき「見積りあるある」にどう対処すればいいか、などなど登壇者の入交さんからたくさんのポイントを教えていただきました。
見積り作成の指標「時間/標準値/スキル」を押さえよう
見積りの金額設定の手がかりとして、まずは「時間」が挙げられました。
一口に「時間」といえど、仕事にかかる時間は実作業に必要な時間だけではありません。打ち合わせやメンバー間の調整・管理、下調べなどの準備にかかる時間…これらを確保できるスケジュール組みを見越して「必要な時間」を見積る必要があります。
WebやIT業界では「人日」や「人月」など作業量(工数)を時間に置き換える考え方もありますが、その「1日」とは実際に何時間?との問いも印象的でした。会場では1日=8時間前後という方が多かったようです。
こうして算出した所要時間に単価を掛けて見積りの金額を設定します。
ただし、作業内容やその人のスキル=付加価値によって単価は変動します。また、その価格設定と一般的な値のズレが大きくなると、仕事の受注につながらない可能性も出てきます。
- その仕事に必要な時間
- 作業者の能力・スキル
- 標準的な価格・納期
これらを把握することでバランスの良い見積りができるとのことでした。
値引きにご用心
さて、見積書を作成して提出しても、すんなりこちらの言い値が通るとは限りません。値引き交渉にあってしまった場合についても、様々なパターンの対応策を教えていただきました。
まず肝に銘じておきたいことに「理由のない値引きはNG」との心得が挙げられました。なぜなら理由なく値引きすると、初めに出した見積りが担保されず、その後の信頼関係にも影響を及ぼすからとのことでした。
「まけてよ」が口癖の担当者はさておき、クライアント側にも懐事情やそもそも認識のズレがある場合もあります。提出した見積りと反応に大きなズレがある場合には、相手の「予算感」やその予算の理由を素直に尋ねてみることも有効だそうです。
その上で、要望の優先順位を聞き出し、重要度の低い機能はカットするといった提案をして折り合いをつけるという対処法を教えていただきました。
また、スキルアップや実績・人脈作りなど自己都合で見積りを低く出す場合を含めて、値引きした場合にはそれとわかるよう明記しておくことで、安く請け続けるリスクを回避できるということでした。
自分の仕事の価値を決めよう
今回ご参加いただいた27名のうち、20名が個人やフリーランスでお仕事をされている方でした。
通常業務に割り込んでくる見積り作業はやっかいなものですが、自分の仕事の価値を決める「ホントに大事な」ことでもあります。質疑応答のコーナーでは、「つまるところお客様との人間関係」とのお話も出ていました。
「見積りに絶対はないので、自信を持って書く!」のメッセージで締められた今回の勉強会。見積りの話をきっかけに、自分の作業時間や密度、市場価値、コミュニケーションの取り方など、仕事に関する様々なことを振り返ることができました。
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懇親会
勉強会の後は会場を移して懇親会が行われました。今が旬のメジカの新子に舌鼓を打ちつつ、勉強会で話し切れなかった見積りの疑問や「ここだけの話」で盛り上がりました。
登壇いただいた入交さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
写真撮影:中野玄(HOOP Design)、上野洋平(notch)